誰もが知ってる多数のIT企業が本社を構えるシリコンバレーは、かつてのヒッピー文化の中心地サンフランシスコの中心街から南に車で1時間ほど走った地域に広がっています。
そのシリコンバレーからさらに南、国道1号線をロスアンゼルスに向かって車を走らせること2時間半、ビッグサーと呼ばれる地区にエサレン・インスティチュートと呼ばれる研修センターのゲートが待っています。
シリコンバレー地区に客先をいくつか持っていた筆者は、金曜日に業務が終わるとその足で車を走らせて、こちらの施設に向かって週末セミナーすることが何度かありました。
そこは自己啓発セミナーが毎年600コースほど開催され、東京ドーム2個分強の敷地を持つ広大なリトリート・センターです。
こちらの施設に滞在中、初めてアイソレーション・タンク(最近はフローティング・タンク)なるものの話を聞きました。
そしてようやく、そのフローティング・タンクを体験する機会を得ました。
その理由は、”マインドレス”を習った方からの『無念無想と言うけれども、それがどんなものなのか実感が湧かない』、と言う質問にどんな体験で喩えたら感じを掴んでもらえるか?と考えていたからでした。
このタンクを1960年代に開発したジョン・C・リリー医学博士は、その状態を次のように表現しています。 『五感のあらゆる感覚がなくなり、潜在意識のレベルに意識は沈み、深いリラクゼーションを得ます。 体が無くなり意識だけの存在になったような錯覚に陥ります。』
近年、イルカと泳いで癒される体験が実際に出来るところがあります。 日本では御蔵島などで、ドルフィンスイムが出来るようです。 このリリー博士の名前は馴染みがないかも知れませんが、イルカが人間のような知性的な動物であることを、世に知らしめた人として知られています。
さて、シャワーを浴び、耳栓をしっかりして、いよいよフォローティング・タンクに入ります。 水の温度は、35.5℃、暑くも寒くもない温度。 入浴剤にも使われているエプソムソルト(硫酸マグネシウム)を溶かしてあるので、楽に頭を含めた全身がプカリと浮きます。 ですから、呼吸をする鼻や口に水が入りません。
このタンクに入ることによって断ち切れるのは、人との接触、光の刺激、音の刺激、重力、温度の変化、皮膚への刺激、電磁波、そして業務メール,etc.
音のない暗闇にただ浮かび、五感からの刺激は一切無くなります。 身体の感覚が無くなり、目覚めた意識だけの存在になっていきます。
先ほどの医師でもあり開発者のリリー博士は、『深いリラックス体験は、体内の免疫力や恒常性を活性化し、自律神経のバランスを改善してくれます。 また、心身のバランスの崩れから生じる様々な自律神経症状(頭痛、腰痛、肩こり、倦怠感、イライラ感、めまい、火照り、不眠症等)を緩和してくれます』と言います。 さもありなん、と自然に思えてきます。
そしてイルカの鳴き声を聴きながら、周囲が徐々に明るくなって90分のフローティングが終了です。
無念無想、何も考えない心地良さを手頃に体験できるか?
慣れれば、このフローティング・タンク体験によって、日常では味わえない深いリラックスを感じられる方も多いと思います。
一方、この何も考えず、意識だけの存在になる心地良さは、正しくそのコツを掴んでいただければ、”マインドレス静坐”で日常的に体験出来るようになるものです。 また、その半眠半覚醒状態は、直感力を高めることでも知られています。
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