オリンピックで日本人が初めてメダルを取った種目は、テニスで銀メダルだったとか。 それから96年後、そのテニスで錦織圭が昨年のリオオリンピックで銅メダルを獲得したのは、感動ものでした。
世界を転戦し、活躍めざましい錦織選手ですが、テレビなどでその試合ぶりを見る機会がありますと、よく登場する熱血解説者が途中から解説するというより、『行け!』とか『頑張れ〜!』とかの掛け声一辺倒になってきます。 さらに熱を帯びてくると、『圭、入れ! 入るんだ!』と意味不明な言葉が登場してきます。
ボールが相手のコートに入れ、と言っているのでなく、錦織選手に対して、『入れ!』と言っているわけです。 これでは、訳がわかりません。
実はこれ、『ゾーンに入れ!』と言っているのでした。 そうです、あのゾーンです。 その状態に入ると普段以上のプレーが出来てしまう。 今回のリオオリンピックでの錦織選手であれば、準々決勝の相手も格上でしたし、3位決定戦のナダル選手もこれまで負けがこんでいる相手でしたが、見事に勝ちました。 スーパーゾーンに入ったのでしょうか。
27歳になってから挑戦したメジャーリーグで、今年3000本安打という偉業を達成したイチロー選手も、調子がいいとボールが止まって見える、というのも『ゾーンに入った』状態でしょう。
これは体が勝手に最高のパフォーマンスになるように動いてしまう状態とでもいいましょうか。
しかし、この『ゾーン』とか『フロー』とも呼ばれる状態は、トップアスリートだけの特権では決してありません。
深い呼吸によって心身が静まり、いつの間にか静坐の状態に入るのを体験する時、私たちにも『フロー』がやってきます。
『ゾーン』の主役は、無心の心であり、その時に体を動かしていればスポーツ中であり、体を静止させていれば、静坐中という違いがあるだけです。
創作落語家の立川吉笑の落語に、このあたりをネタにした『ぞおん』というのがあります。
落語の中では、「ゾーンは、入ろうとして入れるもんではありませんわな」と語っていますが、マンドフル静坐は、自分の意思でその『ゾーン』への入り口を探り当てていきます。